サ高住の住所地特例、次の制度改正で導入へ-厚労省、介護保険部会に提案

 

 

サ高住の住所地特例、次の制度改正で導入へ-厚労省、介護保険部会に提案

社会保障審議会の介護保険部会(2日、東京都内)

 厚生労働省は2日の社会保障審議会介護保険部会(部会長=山崎泰彦・神奈川県立保健福祉大名誉教授)に、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に住所地特例を適用することを提案し、大筋で了承を得た。今後、厚労省は、次の介護保険制度改正が見込まれる2015年4月の適用を目指し、来年の通常国会に関連法の改正案を提出する見通し。

 住所地特例は、市町村を超えて施設に入った人を、引き続き以前の市町村の被保険者として扱う制度で、施設がある市町村の保険財政の負担増を防ぐことを目的としている。現在、介護保険の住所地特例の対象となっているのは、特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険施設と、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームなどの特定施設の入居者。一方、賃貸借方式で特定施設入居者生活介護の指定を受けていないサ高住の利用者は、対象外となっている。

 この点について、一部の市町村は、サ高住の増加が保険財政の悪化を招くとして、サ高住も住所地特例の対象に含めるよう要望していた。また、厚労省の「都市部の高齢化対策に関する検討会」の報告書でも、サ高住の94%が有料老人ホームの機能を担っており、入居者側の介護ニーズも、一般の有料老人ホームと似通ってきていると指摘し、サ高住を住所地特例に組み入れることを提案した。

 こうした状況を受け、厚労省では、介護保険部会にサ高住への住所地特例の適用を提案。具体的には、▽介護や食事の提供が行われるなど、有料老人ホームに該当するサ高住については住所地特例の対象とする▽安否確認と生活相談サービスだけのサ高住は、対象外▽住所地特例の対象施設に住む人も、現在住んでいる市町村が指定する地域密着型サービスを活用できるようにすると同時に、地域支援事業の対象ともする。その費用については、市町村間で調整する―などを示した。

 会合では、ほぼすべての委員がこの提案に賛同した。ただ、「おおむね賛同できるが、『供給が過度な需要を生む』弊害を考慮し、対応すべき」(結城康博・淑徳大教授)や、「必要なことだが、(サ高住に対する)第三者の評価が必要」(鷲見よしみ・日本介護支援専門員協会長)など、慎重な運用が必要とする声も上がった。

■現役世代の保険料の総報酬割導入なども提案

 この日、厚労省は、40-64歳が負担する介護保険の保険料(第2号保険料)を各医療保険者の総所得に応じて決める「総報酬割」の導入についても介護保険部会に提案した。中小企業の被用者が加入する全国健康保険協会と、健康保険組合連合会などとの負担能力の差が拡大していることを受けての提案で、具体的には、「後期高齢者医療制度における同制度導入の検討をふまえつつ、検討を進める」としている。この提案についても、土居丈朗委員(慶大教授)や岩村正彦委員(東大大学院教授)など、多くの委員が前向きに評価したが、布施光彦委員(健康保険組合連合会副会長)は、「介護保険の理念を逸脱する」と強く反対。久保田政一委員(日本経済団体連合会専務理事)や岡良廣委員(日本商工会議所社会保障専門委員会委員)も、導入に反対する姿勢を示した。【ただ正芳】