追い出される「償却切れ老人」 介護施設がもうけ優先?

    

追い出される「償却切れ老人」 介護施設がもうけ優先?

有料老人ホームの入居者

 

 「介護を成長産業に」の陰で、入居者が苦しんでいる例はこれだけではない。

 入居が長く、一時金の取り崩し(償却)が終わりかけ「もうからない客」になった「償却切れ老人」が、退去を迫られる例もある。

 「もう入ってもらう部屋はない。受け入れは無理です」。受話器の向こうで施設長の乾いた声が響いた。父親(当時77)が入居していた50代の女性は一方的に通告され、途方に暮れた。

 「日本ケアリンク」(東京)が運営する老人ホーム「せらび新横浜」に入っていた父親は昨年6月、外出先で転んで入院。四肢まひが残り、医師から要介護度が「1」から「5」になる見通しを知らされた。退院が決まり、施設に「戻ります」と連絡した際の、思いもよらぬ返事だった。

 入居契約には施設側が退去要請できる条項もあるが、父は該当しなかった。

 施設に戻ることを拒む正当な理由はない。「父のような入居者はなるべく追い出して、新しい入居者を入れたかったのだと思う」。いまも女性はそう疑っている。入居時に納めた一時金1440万円は、すでに3年半が過ぎて償却が進み、約300万円を残すだけだった。「あと1年半、つまり入居して5年がたてば、家賃は入らなくなる。施設にとっては『資産価値』がなくなったんでしょう」