生命保険各社が介護が必要になった際に一時金や保険金を受け取れる新商品を相次いで投入している。人口減少で国内市場が縮小し、保険販売が頭打ちになる一方、少子高齢化の進行で高齢者層は増えており、介護分野を今後の成長分野と位置づけているためだ。
住友生命保険は25日、介護保険金の受け取りがない場合でも、保険料の支払期間満了時から一定期間を過ぎると、支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れる商品を発売した。保険の加入者がケアマネジャーなど介護の専門家による訪問相談や、24時間の電話相談を無料で受けられるサービスも導入。老後の介護保障と貯蓄機能の両立を求める顧客を取り込む狙いだ。
明治安田生命保険も今月、銀行の窓口販売向けの介護保険を発売。加入条件を3カ月以内の入院の有無など、計6つの簡単な告知事項に絞った上、解約返戻金を低く設定し、保険料を抑えた。銀行の窓口で扱う保険は、数百万円の保険料を一括で払うタイプの商品が多い中、同社はシンプルな設計と安価な保険料で他社との差別化を狙う。
一方、来年1月に介護保障の給付条件を緩和するのが第一生命保険。現在は、身体状態や日常生活の動作などを年齢を問わずに独自の基準で判定し、給付金を決めている。これを来年以降は独自基準に加え、40歳以上が対象の公的介護保険に連動し、要介護2以上に認定されれば自動的に保険金が支払われるようにして給付対象を広げる。
各社の介護保険の販売は好調だ。日本生命保険は今年4~8月の介護保険の販売件数は約26万件で前年同期比2割増となった。明治安田生命も、昨年9月に発売した介護保険の販売件数が、今年6月末で約2万2000件となり、1年間の販売目標件数(1万6000件)を大きく上回っている。
厚生労働省は、現在1割となっている公的介護保険の自己負担の割合を、一定以上の所得がある人に対し、2割に引き上げる案を示すなど、高齢化の進行で介護保険の財源は逼迫(ひっぱく)している。生命保険文化センターの今年の調査によると、自分が将来要介護になった場合の不安について、「非常に不安を感じる」と回答した人は40.8%。この割合は1998年(29.9%)以降、増え続けており、介護に対する不安は高まっている。
生保各社は「公的保障の見直しが進めば、公助から自助への流れはますます強まる」(生命保険協会の佐藤義雄会長)と見込んでおり、顧客争奪戦はさらに激しくなりそうだ。